ちゃらんぽらん日記

日々のあれこれ

2013.3.26

 山へ桜を見に行く。数種の桜が満開だ。薄い桃色をした枝垂桜と八重桜が特に綺麗だ。少しその辺を歩く。水彩絵の具とスケッチブックを持って来、写生をしているご老人が居る。ツワを採集しているご夫婦が居る。数々の植物や花が植わっている。中でも心を打つのは、薄紫色をした菫だ。濃い紫色をした薊の蕾も良い。下って川へ降りようと思い立つが、地面が悪く断念する。水が出ていて靴を汚してしまった。予定と少し違っていたとはいえ、山へ来るときにスエードの靴を履くものではない。

 移動し、川辺へ寄る。太いイタドリが生えている。俗に言うサドである。ぽきっと折って食す。酸っぱい。小さな枇杷の木が植わっている。紫色をした大根の花が少し生えている。これから先、この花を見ると私は母を思い出すだろう。川辺で石を見て歩く。良い石を見つけ片手に持つ。綺麗な石を見つけてはポッケに入れる。川で大きな魚の跳ねる音がする。

 川の近くに穴のようなものがある。石で囲まれた空洞だ。何に使われているのか、あるいは何に使われていたのか分からない。覗くと、薇が生えている。蔓状の植物が空洞の入り口を飾る。どうしようもなくその形にひかれる。

 薄紫色の菫と、歪な形をした蔓を、これから数日は何度か思い出すだろう。

 

 近頃、私の家族の良いところを一つ見つけた。父も母も粗食を愛し、何でも美味しい美味しいと言って食べるところだ。薄味が好きで、食べ物本来の味を楽しむ。私も感性が近いから、3人寄って、美味しい、美味しいと笑って食卓を囲む。

 久しぶりに読んだお聖さんの小説から引用をして終わろう。

 

「 何たって、男女二人して、

 (これ、おいしいわ、ね、あなた)

 (うん。うまいなあ)

 というのが(浦井の感懐によれば)人生至福の境地なのだ。」

        田辺聖子『春情蛸の足』「慕情きつねうどん」