ちゃらんぽらん日記

日々のあれこれ

焦り

 今、ミヒャエル・エンデの『モモ』を読んでいる。幼い頃、繰り返し読んだ本だ。先生が、「焦るときにはこれを読むのが一番だよ。」とおっしゃっていたのを思い出して、久しぶりに再読している。

 その中で、道路掃除夫のベッポはこう言う。

「なあ、モモ、とっても長い道路を受けもつことがよくあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」

「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息が切れて、動けなくなってしまう。こういうやりかたは、いかんのだ。」

「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸(いき)のことだけ、つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」

「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」

「ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶ終わっとる。どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからん。」

「これがだいじなんだ。」

 私自身よく考え、自分に言い聞かせることであるし、ついこの間、友人にアドバイスしたことでもある。

 長いスパンで先のことを考えると、不安やよくない考えが次々と生まれてしまうこと。そのために焦って、根を詰めてものごとにあたると、途中で息切れしてしまって、結局うまくいかなくなってしまうこと。だから、先々のことを考えず、まず目の前のことだけを考えること。ひとつ、ひとつを丁寧にこなしていく。ひとつひとつに向き合って、ひとつひとつこなしていけば、いつの間にか、多くを乗り越えてきていることに気づく。

 ここ数年、数ヶ月で学んだはずなのに、また焦って、見失ってしまいそうだったことに、ベッポが気づかせてくれた。

 これもよく自分に言い聞かせることだが、当初の目的を見失わないこと。何か目的があって事をはじめたのに、いつしかその事に夢中になってしまい、目的を忘れてしまうことが、多々ある。事にのめりこむうちに、見栄や、プライドなど要らないものが付いてきて、気づいたら身動きが取れなくなることがある。こういうときは、大抵焦っている。

 ベッポの言葉を思い出して、目の前の一歩だけを見ること、そして、当初の目的を思い出すこと。これで、大抵のことは乗り越えていけるはずだ。