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ちゃらんぽらん日記

日々のあれこれ

宮本輝『錦繍』を読んで

 久しぶりに小説を読んだ。会社の幹部が学生の頃に卒論のテーマとして選んだ小説だと紹介してくれたものが、たまたま本棚にあったのでこの3連休で読んでみた。以下、感想を書く。

 読み終えて『錦繍』というタイトルから感じるものは、冒頭の蔵王の、また終盤の料亭の庭の紅葉の、赤の緑の黄の、そして星空の美しさ。その下で複雑に入り組みながら綾なす男と女の人生。

 それは哀しみを孕み、苦しみに満ちたもので、読中はうす汚れているとさえ感じさせるものだが、読後は清々しい。それは、有馬靖明と星島亜紀が互いに文を交わすことで<過去>を受け入れ、<いま>と真摯に向き合う覚悟を決めたからだろう。

 亜紀の不具の息子、四つ指の令子の祖母、そして精神的不具だったと言える靖明と亜紀。

不具なら不具のままに、出来うる限り正常な人に近づけるよう、何が何でも<いま>を懸命に真摯に生きるしかない

 これは亜紀の書いた言葉だ。それは不具への否定ではなく不具としての努力しながら生きる生き方への肯定だろう。

 この作品は、苦悩に満ちながらも<いま>を生きようとする者への壮大なエールだと私は受け取った。

錦繍 (新潮文庫)

錦繍 (新潮文庫)

 

 

 

【補足】

尚、上記について私は概ね肯定的に受け取ったが、それは一方で私の身近な問題を想起させ、今後のテーマとしてあぶりださせた。私には重度の知的障害者である姉がいるのだが、私の両親が語ったひとつのエピソードを思い出したのだ。姉が小学生の頃、姉に文字を懸命に教え込もうとする教師に向かって私の両親は「そんなことをして何になるのか」と問うたと言う。その発言に対して私の考えはまだまとまっていない。障害者でも納税者になり、政治的な発言権を持つべきだという考えを私が知ってから数年になるが、では知的障害者に関してはどうなのか、その辺の勉強がまったくできていないことが明らかになった。今後も継続して勉強していきたい。